今では建築躯体は工場でのプレカットがほとんどですが、
私が大工の見習いに入った48年前はまだ大工の棟梁が墨付けをして
手刻みで木材を加工していました。見習いは刻み物をしながら墨付けを覚えます。
墨付けをするときに最初に作るのが尺竿(間竿)です。4Mの1寸角に
1尺ごとに13尺(2間)まで印をして3尺2寸5分(半間)・6尺5寸(1間)・
9尺7寸5分(1間半)と基準寸法を記します。次の面には1階の柱尺、土台から床高、
敷居天・鴨居までの内法寸法・天井高・胴組天までを記し、次の面には2階の柱尺、
床高・敷居天・鴨居までの内法寸法・天井高・桁天・梁天を記しします。次の面には
小屋組みがわかるように束尺、一の母屋・二の母屋・三の母屋・・・と母屋天を記します。
この尺竿一本で建物の矩計り寸法がわかります。大工は尺竿と差し金・墨壺、
墨差し(竹で作った竹筆)で一棟分の木材に、看板板(大工用の図板)を見ながら
墨付けをしていきます。これだけで大工の頭の中には一棟構造躯体が立ち上がって
いました。今の大工さんはプレカットした構造材がトラックで現場に運ばれてくるので、
尺竿や墨付けを知らない大工さんも多いと思います、刻み物、木材加工は面白かったです。
今の若い大工さんたちも木材を刻む仕事、一度はこんな経験をすることができれば良いなと、
そのころを懐かしく思いました。
久々のブログでした。